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(8) 労働集約性と面積規模と収量:中国では規模が小さく労働投入が多く、ha当り収量水準が他国より高いのに対し、タイの場合はその逆で耕地が広く労働投入は少なく、収量も低い。
(9) 改良品種・灌漑田の冬期作性:一年に2回の場合が多いが、インドネシアでは2.5回も収穫する。それに対して在来品種は年に1回である。従って、改良品種・灌漑田の場合は1回の収量が多い上に、年間を通じて総収穫量がさらに多くなる効果がある。
(10) 機械利用と冬期作化:緑の革命の本質はBCテクノロジーであると述べたが、機械化は冬期作化を容易にするのでトラクターの利用率は高い。

 

4) 緑の革命による増産成果
以上のような増収効果を伴う緑の革命の進展の結果、世界における米生産はアジアを中心にして過去30年間に飛躍的な拡大を実現した。(表2)
世界の米の総生産量は、1960年代前半から90年代前半の30年間に、2億5千万トンから5億3千万トンヘと倍増したが、それを中心的に担ったのは世界の生産量の90%以上を占めているアジアにおける米生産の倍増であった。その間に、収穫面積も世界・アジア共に15%前後拡大したにせよ、米生産の倍増をもたらした主要因は、約80%も増収したha当り収量の向上であった。つまり、近代的品種の高収量性によって世界の米生産は倍増したと云ってよい。
このような高収量をもたらしたのは、緑の革命によるBCテクノロジーの進展であった。マルサス的危機が発生しなかったのは、彼が無視したかかる農業技術進歩のお陰である。その点で、マルサスとは逆に、絶えざる人口圧力のもとでこそ、農業技術を初期の焼畑農業から休耕農業、更には連作制へと進化させ、集約農業化によって農業生産性を高め、強いては経済発展をもたらしてきたのだとするボスラップの主張は、歴史的事実としてその基本的妥当性を認めることができよう。(6)

 

 

 

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